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【徹底解説】SES(システムエンジニアリングサービス)の業務内容とは?種類別に理解するSESのリアル

1. はじめに:SES(システムエンジニアリングサービス)とは?IT業界で頻繁に耳にする「SES(エス・イー・エス)」という言葉をご存知でしょうか? SESは「System Engineering Service(システムエンジニアリングサービス)」の略称であり、主にクライアント企業に対してITエンジニアの技術力やスキルを提供するサービスを指します。一般的なITプロジェクトにおいて、企業が自社で必...

BPO Media編集部
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1. はじめに:SES(システムエンジニアリングサービス)とは?

IT業界で頻繁に耳にする「SES(エス・イー・エス)」という言葉をご存知でしょうか? SESは「System Engineering Service(システムエンジニアリングサービス)」の略称であり、主にクライアント企業に対してITエンジニアの技術力やスキルを提供するサービスを指します。

一般的なITプロジェクトにおいて、企業が自社で必要なIT人材を常に抱えることは、コスト面やプロジェクトの変動に対応する上で難しい場合があります。そこで、SES企業が自社のエンジニアをクライアント企業のプロジェクトに常駐させ、その技術力を提供することで、クライアントは必要な期間、必要なスキルを持つ人材を柔軟に確保できるようになります。

SES契約では、業務の遂行に対して報酬が支払われる「準委任契約」が用いられることが一般的です。これは、成果物の完成を約束する「請負契約」や、指揮命令権がクライアントにある「派遣契約」とは異なる特徴を持ちます。SESは、IT業界における人材とプロジェクトのニーズを繋ぐ重要な役割を担っており、年々その需要は高まっています。

参考文献:


1.1 SESの基本的な定義と契約形態

SES(システムエンジニアリングサービス)は、IT企業がクライアント企業に対し、自社のエンジニアの技術力を提供するサービス形態です。このサービスでは、SES企業に所属するエンジニアが、クライアント企業が抱えるITプロジェクトの現場に常駐し、そのプロジェクトの課題解決や開発業務に携わります。

SESにおける主な契約形態は「準委任契約」です。準委任契約とは、特定の業務の遂行(ここではエンジニアの技術提供)に対して報酬が支払われる契約であり、成果物の完成義務はありません。エンジニアはクライアント企業の指揮命令下で業務を行うのではなく、SES企業との間で結んだ契約に基づき、専門的な知識やスキルを提供します。この柔軟な契約形態により、クライアント企業は必要な期間だけ専門人材を確保でき、SES企業はエンジニアに多様なプロジェクト経験を積ませることが可能になります。

参考文献:

1.2 SESがIT業界で広く利用される背景

SESがIT業界で広く利用される背景には、現代のITプロジェクトが抱える多様な課題と、それを解決するためのニーズがあります。

まず、IT技術の急速な進化と複雑化により、企業が必要とする専門性の高いスキルや知識が常に変化しています。自社内でこれらの技術をすべてカバーすることは困難であり、特定のプロジェクト期間だけ専門家を必要とするケースが増えています。SESは、このような一時的かつ専門的な人材ニーズに迅速に対応できるため、多くの企業にとって魅力的な選択肢となっています。

また、少子高齢化によるIT人材の不足も大きな要因です。企業は優秀なITエンジニアを安定的に確保することが難しくなっており、外部のSES企業から必要なスキルを持つ人材を柔軟に調達することで、プロジェクトの遅延を防ぎ、事業を推進しています。さらに、新規事業の立ち上げや既存システムの改修など、プロジェクトの規模や期間に応じて最適な人材をアサインできるSESの特性は、企業の経営戦略上も大きなメリットとなっています。

参考文献:

1.3 混同されやすい契約形態(派遣、請負)との違い

SESの契約形態である「準委任契約」は、人材派遣における「派遣契約」や、システム開発などで用いられる「請負契約」と混同されがちですが、それぞれ明確な違いがあります。

  • SES(準委任契約):
    • 指揮命令権: 基本的にSES企業にあり、エンジニアはクライアントから業務指示を受けるものの、最終的な指揮命令権は所属元のSES企業にあります。
    • 報酬: エンジニアが提供した技術力や労働時間に対して支払われます。成果物の完成義務はありません。
    • 目的: 特定の業務の遂行を通じて、専門技術を提供すること。
  • 人材派遣(派遣契約):
    • 指揮命令権: 派遣先のクライアント企業にあります。エンジニアは派遣先の指示に従って業務を遂行します。
    • 報酬: 派遣元の企業が派遣された労働時間に対して派遣料金を請求し、派遣元がエンジニアに給与を支払います。
    • 目的: クライアント企業の指揮命令下で労働力を提供すること。
  • 請負(請負契約):
    • 指揮命令権: 請負元の企業(受託会社)にあります。クライアントは請負会社に具体的な指示を出すことはできません。
    • 報酬: 特定の「成果物」の完成に対して支払われます。成果物が完成しなければ、原則として報酬は発生しません。
    • 目的: 契約で定められた成果物を完成させること。

これらの違いを理解することは、SESの特性を正確に把握し、適切な契約形態を選択する上で非常に重要です。

参考文献:


2. SESにおける業務内容の全体像

SES(システムエンジニアリングサービス)において、エンジニアが携わる業務内容は非常に広範です。ITプロジェクトのライフサイクル全体を通じて、多種多様なフェーズと役割が存在し、SESエンジニアはクライアント企業のニーズに応じて、その専門知識とスキルを提供します。

SESの業務は、単にコードを書くことだけではありません。プロジェクトの初期段階でのシステムの方向性を決める要件定義から、具体的な設計図を描く設計、実際にシステムを構築する開発・実装、品質を保証するためのテスト、そしてリリース後の安定稼働を支える運用・保守に至るまで、ITプロジェクトのあらゆる側面に深く関わる可能性があります。

SESエンジニアは、特定の技術領域に特化したスペシャリストとして活躍することもあれば、プロジェクトマネジメントやリーダーシップを発揮してチームを牽引することもあります。この多様性がSESの大きな特徴であり、エンジニアにとっては幅広い経験を積む機会となる一方、企業にとっては必要な時に必要なスキルを持つ人材を柔軟に確保できるというメリットがあります。SESの現場では、技術スキルはもちろんのこと、円滑なコミュニケーション能力や問題解決能力も非常に重要とされます。

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2.1 SESで求められる役割とフェーズ

SESにおける業務内容は多岐にわたりますが、ITプロジェクトのどの段階(フェーズ)で、どのような役割を求められるかを理解することが重要です。SESエンジニアは、プロジェクトの要件定義から設計、開発、テスト、運用、保守に至るまで、様々なフェーズでその専門性を発揮します。

具体的には、プロジェクトの初期段階である「要件定義フェーズ」では、顧客の要望をヒアリングし、システムの仕様を明確にする役割を担うことがあります。続く「設計フェーズ」では、システム全体のアーキテクチャや機能の詳細設計を行い、「開発・実装フェーズ」では、実際のプログラミングを通じてシステムを構築します。その後、「テストフェーズ」で品質を検証し、リリース後の「運用・保守フェーズ」では、システムの安定稼働をサポートします。

SESでは、これらのフェーズの中から、クライアントのニーズとエンジニアのスキルセットが合致する部分にアサインされることが一般的です。そのため、エンジニアは特定の専門分野に特化することもあれば、プロジェクトの進行に応じて複数のフェーズを横断的に経験することもあります。この多様な経験が、SESエンジニアのキャリア形成において大きな強みとなります。

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2.2 SESエンジニアに共通して求められるスキル

SESエンジニアとして多様なプロジェクトで活躍するためには、特定の技術スキルだけでなく、共通して求められる様々なスキルが存在します。

まず、最も基本となるのは、自身の専門分野における技術スキルです。プログラミング言語(例:Java, Python, JavaScript)、フレームワーク、データベース、クラウドサービス(例:AWS, Azure, GCP)などの知識と実務経験は不可欠です。しかし、これに加え、様々なクライアントやチームで働くSESエンジニアにとって、コミュニケーション能力は極めて重要です。プロジェクトメンバーやクライアントとの円滑な連携、課題や進捗の適切な報告、不明点の確認など、あらゆる場面で高いコミュニケーション能力が求められます。

また、常に新しい技術が登場するIT業界で働く上で、学習意欲問題解決能力も不可欠です。予期せぬトラブルや仕様変更にも柔軟に対応し、自ら情報収集を行い、解決策を見つけ出す力が求められます。さらに、クライアントのニーズを正確に理解し、プロジェクトの目標達成に貢献するための論理的思考力提案力も、SESエンジニアが市場価値を高める上で重要な要素となります。

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3. 【職種別】SESでよくある業務の種類と内容

SESエンジニアが携わる業務は、プロジェクトの性質やクライアントの業界によって大きく異なりますが、職種によって求められる専門性と業務内容は共通しています。ここでは、SESで特に需要が高い「開発エンジニア」に焦点を当て、その具体的な業務内容について種類別に解説します。

3.1 開発エンジニア(プログラマー、システムエンジニア)

開発エンジニアは、システムの設計から実装、テストまで、ITサービスの根幹を築く役割を担います。SESにおける開発エンジニアは、Webサービス、スマートフォンアプリ、業務システム、組み込みシステムなど、多岐にわたる分野で活躍しており、プロジェクトの要件に応じて最適な技術を選定し、コードを記述することで、クライアントのビジネス課題を解決します。プログラマーは主にコーディングを担当し、システムエンジニアは設計や要件定義といった上流工程から関わることが多いですが、SESの現場ではこれらを包括して「開発エンジニア」と呼ぶことが一般的です。

3.1.1 Webアプリケーション開発

Webアプリケーション開発は、SESにおいて最も一般的な業務の一つです。インターネットを通じて利用されるサービス(例:ECサイト、SNS、企業の公式サイト、各種予約システムなど)を構築します。フロントエンド(ユーザーが直接操作する画面部分)とバックエンド(サーバー側でのデータ処理やデータベース連携)の両方、またはどちらか一方を担当します。使用される技術は、フロントエンドではHTML、CSS、JavaScript(React, Vue.js, Angularなど)、バックエンドではPython(Django, Flask)、Ruby(Ruby on Rails)、PHP(Laravel)、Java(Spring Boot)、Node.js(Express)などが挙げられます。クライアントのビジネスモデルに直結するWebサービス開発は、常に高い需要があり、トレンドの変化も速いため、継続的な学習が求められます。

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3.1.2 スマートフォンアプリ開発

スマートフォンアプリ開発は、iOS(iPhone/iPad)やAndroidデバイス上で動作するアプリケーションを開発する業務です。ネイティブアプリ(Kotlin/Java for Android, Swift/Objective-C for iOS)の開発に加え、クロスプラットフォーム開発(React Native, Flutter, Xamarinなど)のニーズも高まっています。SNSアプリ、ゲームアプリ、各種ユーティリティアプリ、企業の業務効率化アプリなど、その種類は多岐にわたります。SESにおいては、企画段階からUI/UX設計、開発、テスト、リリース後のストア申請や運用保守まで、一連のプロセスに携わることがあります。モバイル市場の拡大に伴い、この分野の専門性を持つ開発エンジニアの需要は非常に高い状態が続いています。

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3.1.3 業務システム開発

業務システム開発は、企業内の特定業務(会計、人事、生産管理、顧客管理など)を効率化するためのシステムを開発する業務です。企業の基幹システムや社内ツールとして利用され、業務プロセスの改善、コスト削減、データ管理の効率化などを目的とします。多くの場合、既存のレガシーシステムのリプレイスや、新たな業務フローに対応するための新規開発が含まれます。Java, C#, .NET, Python, COBOLなど、幅広いプログラミング言語が用いられ、安定性と堅牢性が特に重視されます。クライアントの業務内容を深く理解し、その課題をITで解決するコンサルティング的な側面も求められることがあります。

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3.1.4 組み込み・制御システム開発

組み込み・制御システム開発は、家電製品、自動車、産業機械、医療機器など、特定の機器に組み込まれてその動作を制御するシステムを開発する業務です。IoT(Internet of Things)の普及により、近年特に注目されています。リアルタイム性や省電力性、高い信頼性が求められることが多く、C言語やC++といった低レイヤー言語が主に用いられます。ハードウェアとソフトウェアの両方の知識が必要となる場合があり、デバッグには専用のツールや環境を用いることもあります。SESでは、自動車関連企業や大手電機メーカーのプロジェクトに参画し、製品の核となる部分の開発を担うことがあります。

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3.2 インフラエンジニア(サーバー、ネットワーク、クラウド)

インフラエンジニアは、ITサービスの基盤となるサーバー、ネットワーク、そして近年ではクラウド環境の設計、構築、運用、保守を専門とする職種です。開発されたシステムが安定稼働し、ユーザーに快適に利用されるためには、堅牢で効率的なインフラが不可欠であり、SESにおいても非常に重要な役割を担います。縁の下の力持ちとして、システムの安定稼働を支える要となります。

3.2.1 サーバー構築・運用保守

サーバー構築・運用保守は、ITシステムやWebサービスが稼働するための物理的または仮想的なサーバー環境を構築し、その後も安定的に稼働させるための管理を行う業務です。具体的には、OS(Linux, Windows Serverなど)のインストールと設定、各種ミドルウェア(Webサーバー、DBサーバーなど)の導入と設定、セキュリティ対策、バックアップ設定などが含まれます。運用保守フェーズでは、サーバーのリソース監視、障害発生時の切り分けと復旧作業、パッチ適用によるセキュリティアップデート、パフォーマンスチューニングなど、多岐にわたる業務を通じてシステムの可用性と安定性を維持します。大規模なシステムや24時間365日稼働が求められるサービスにおいては、特にサーバーの専門知識を持つSESエンジニアの需要が高まります。

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3.2.2 ネットワーク設計・構築

ネットワーク設計・構築は、サーバーやPC、各種デバイスを相互に接続し、データ通信を可能にするためのネットワーク環境を設計し、実際に構築する業務です。これには、ルーター、スイッチ、ファイアウォールなどのネットワーク機器の選定と設定、IPアドレス設計、VLAN構築、VPN接続設定、ルーティングプロトコルの設定などが含まれます。高速かつセキュアな通信環境は、現代のITシステムにおいて不可欠であり、SESエンジニアはクライアントの要件に基づき、最適なネットワーク構成を提案・実装します。通信トラブル発生時の原因特定や解決、帯域幅の最適化などもネットワークエンジニアの重要な役割です。

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3.2.3 クラウド(AWS, Azure, GCPなど)環境構築・運用

近年、オンプレミス環境からクラウド環境への移行が加速しており、クラウドインフラストラクチャの構築・運用はSESにおけるインフラエンジニアの主要な業務の一つとなっています。Amazon Web Services (AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform (GCP) といった主要なクラウドサービスを利用し、仮想サーバー、データベース、ストレージ、ネットワークなどのリリソースを設計・構築します。また、サービスが稼働する上での監視、パフォーマンス最適化、コスト管理、セキュリティ設定、自動化(IaC: Infrastructure as Code)なども重要な業務です。クラウド技術は日進月歩であり、新しいサービスの登場も頻繁であるため、常に最新の情報をキャッチアップし、スキルを更新していくことが求められます。

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3.3 テストエンジニア・QAエンジニア

テストエンジニアやQA(Quality Assurance)エンジニアは、開発されたシステムやソフトウェアが、要求された品質基準を満たしているかを確認し、不具合がないかを検証する専門家です。SESにおいては、開発プロジェクトの最終段階だけでなく、開発の初期段階から品質保証の視点で参画し、品質の高いプロダクトをリリースするために不可欠な役割を担います。単にバグを見つけるだけでなく、品質向上のためのプロセス改善にも貢献します。

3.3.1 テスト計画・設計

テスト計画・設計は、テスト工程の成功を左右する重要なフェーズです。この段階では、システムの要件定義書や設計書を基に、どのようなテストを、どの範囲で、どのような手法で行うかを具体的に定めます。テスト計画では、テストの目的、対象範囲、スケジュール、必要なリソース(人員、環境、ツールなど)を明確にします。テスト設計では、テストケース(テストを行う手順と期待される結果)を作成し、テスト観点(機能、性能、セキュリティ、ユーザビリティなど)を網羅的に洗い出します。効率的かつ効果的なテストを行うためには、この計画・設計段階での綿密な検討が不可欠であり、SESエンジニアはクライアントの品質保証チームの一員として、これらの業務に深く関わります。

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3.3.2 テスト実行・不具合報告

テスト実行・不具合報告は、作成されたテストケースに基づいて実際にシステムを操作し、期待通りの動作をするかを確認する業務です。テスト実行中に発見された不具合(バグ)は、その再現手順、発生条件、期待される結果と実際の結果、影響範囲などを詳細に記述し、開発チームに正確に報告します。この際、不具合管理ツール(Jira, Redmineなど)が用いられることが一般的です。開発チームは報告された不具合を修正し、テストエンジニアは修正が正しく適用されたかを確認するための再テスト(リグレッションテスト)を行います。この一連のサイクルを繰り返すことで、システムの品質を高めていきます。SESエンジニアは、客観的な視点から品質を評価し、開発プロセス全体の改善にも貢献します。

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3.4 運用・保守エンジニア

運用・保守エンジニアは、開発・構築が完了し稼働しているシステムが、常に安定してサービスを提供し続けられるように管理・維持する役割を担います。SESにおいては、クライアント企業のITシステム部門やデータセンターなどで常駐し、システムの健全性を保つための日々の業務から、万が一の障害発生時の対応まで、幅広い業務を行います。システムの安定稼働はビジネス継続の生命線であり、縁の下の力持ちとして非常に重要な存在です。

3.4.1 システム監視・障害対応

システム監視・障害対応は、運用・保守エンジニアの最も重要な業務の一つです。システムが24時間365日安定稼働しているかを監視ツール(Zabbix, Nagios, Prometheusなど)を用いて常時チェックします。CPU使用率、メモリ使用量、ディスク空き容量、ネットワークトラフィック、アプリケーションのログなど、多岐にわたる項目を監視し、異常を検知した際にはアラートを発して即座に対応します。障害が発生した場合には、その原因を特定し、システムを早期に復旧させるための初動対応や切り分け、恒久的な対策の立案・実施を行います。迅速かつ正確な対応が求められるため、高いプレッシャーの中で冷静に状況を判断し、問題解決にあたる能力が不可欠です。

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3.4.2 定期メンテナンス

定期メンテナンスは、システムの安定稼働とセキュリティを維持するために計画的に実施される業務です。これには、OSやミドルウェアのセキュリティパッチの適用、データベースのバックアップとリストアの確認、不要なデータの削除やログローテーションによるディスク容量の最適化、システムのリソース状況の確認とチューニングなどが含まれます。また、システムのバージョンアップや機能追加に伴う影響範囲の確認、テスト環境での事前検証なども行われます。定期的なメンテナンスは、予期せぬ障害の発生を未然に防ぎ、システムのパフォーマンスを最適に保つ上で欠かせません。SESエンジニアは、これらのメンテナンス計画の立案から実行までをクライアント企業の運用チームと連携しながら遂行します。

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3.5 その他のSESで関わる可能性のある業務

SESエンジニアの業務は、開発やインフラ、テストに限りません。プロジェクトの規模やクライアントのニーズによっては、より上流のマネジメント業務や、特定の専門知識を要するサポート業務に携わる機会もあります。これらの業務は、高いコミュニケーション能力や問題解決能力、そして幅広いIT知識が求められることが特徴です。

3.5.1 プロジェクトマネージャー(PM)

プロジェクトマネージャー(PM)は、ITプロジェクト全体の責任者として、企画から完了までの全工程を管理する役割を担います。SESにおいてPMとして参画する場合、クライアント企業のプロジェクトの成功に向けて、予算、スケジュール、品質、人員などのリソースを総合的に管理します。具体的には、プロジェクト計画の立案、進捗管理、リスク管理、課題解決、チームメンバーの指導、クライアントとの調整など、多岐にわたる業務を行います。高いリーダーシップと決断力、そして幅広いIT知識とビジネス理解が求められる、非常に重要なポジションです。

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3.5.2 プロジェクトリーダー(PL)

プロジェクトリーダー(PL)は、プロジェクトマネージャー(PM)を補佐し、主に開発チームなど特定のサブチームを率いてプロジェクトを推進する役割を担います。SESにおいてPLとして参画する際は、チーム内のタスク管理、進捗状況の把握、技術的な課題解決のサポート、メンバーへの指示出しや育成などを行います。PMがプロジェクト全体を俯瞰するのに対し、PLはより現場に近い視点で、日々の開発業務が円滑に進むように調整役を果たすことが多いです。技術力に加え、チームをまとめるリーダーシップやコミュニケーション能力が求められます。

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3.5.3 ブリッジSE

ブリッジSE(BrSE)は、主にオフショア開発(海外の企業や子会社に開発を委託すること)において、日本国内のクライアントと海外の開発チームとの間に立って、コミュニケーションを円滑にする役割を担います。SESにおいては、海外に開発拠点を持つ日本の企業や、日本市場に進出する海外企業のプロジェクトで活躍する機会があります。具体的には、日本語で受けた要件を海外の開発チームが理解できるように翻訳・通訳し、逆に海外の開発チームからの質問や進捗を日本側に正確に伝える役割を果たします。IT技術の知識に加え、語学力(英語や中国語など)と異文化理解が不可欠であり、高いコミュニケーション能力が求められる専門職です。

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3.5.4 ヘルプデスク・情シス

ヘルプデスクや情シス(情報システム)の業務も、SESで提供されることがあります。ヘルプデスクは、クライアント企業の従業員からのIT関連の問い合わせ(PCトラブル、ソフトウェア操作方法、ネットワーク接続など)に対応し、問題解決をサポートする役割です。マニュアルに沿った一次対応から、専門部署へのエスカレーション、解決までのフォローを行います。情シスは、企業内のIT環境全体(社内システム、ネットワーク、PC、ソフトウェアライセンスなど)の管理・運用を担い、従業員がITを活用して円滑に業務を行えるよう支援します。トラブル対応だけでなく、新たなITツールの導入支援やセキュリティ対策の強化なども行い、企業のITインフラを支える重要なポジションです。どちらも、IT知識だけでなく、丁寧なコミュニケーション能力と課題解決能力が求められます。

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4. 【フェーズ別】SESで関わるプロジェクトの流れと業務内容

ITシステムの開発プロジェクトは、通常、複数のフェーズを経て進行します。SESエンジニアは、クライアント企業のプロジェクトにおいて、これらの特定のフェーズに特化して関わることもあれば、複数のフェーズを横断して担当することもあります。ここでは、システム開発の一般的な流れに沿って、各フェーズにおけるSESエンジニアの主な業務内容を解説します。

4.1 要件定義フェーズ

要件定義フェーズは、システム開発の最も初期段階であり、プロジェクトの成否を大きく左右する重要な工程です。このフェーズでは、クライアントが「どのようなシステムを作りたいのか」「そのシステムで何を解決したいのか」といった漠然とした要望をヒアリングし、具体的な機能や性能、制約条件などを明確にしていきます。SESエンジニアは、顧客の業務内容や課題を深く理解し、それらをITシステムで実現するための「要件定義書」として文書化する作業を支援します。顧客との密なコミュニケーションを通じて潜在的なニーズを引き出し、技術的な実現可能性を考慮しながら、プロジェクトの方向性を定める役割を担います。

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4.2 設計フェーズ(基本設計・詳細設計)

要件定義フェーズで定められた内容に基づき、システムをどのように構築するかを具体的に設計するフェーズです。このフェーズは通常、「基本設計」と「詳細設計」に分けられます。

  • 基本設計(外部設計): システムの利用者(ユーザー)視点から、画面の構成、操作の流れ、出力される帳票の内容、データ連携方法など、外部から見える部分の仕様を設計します。ユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)を考慮し、利用者にとって使いやすいシステムにするための設計を行います。
  • 詳細設計(内部設計): 基本設計で定められた外部仕様に基づき、システム内部の動き、データベースの構造、プログラムの処理ロジック、各モジュールの機能など、開発者がコードを書くために必要な詳細な仕様を設計します。技術的な実現性や保守性を考慮し、効率的なシステム構築のための設計を行います。

SESエンジニアは、システムエンジニアとしてこの設計フェーズに深く関わり、開発工程へとスムーズに引き継ぐための重要な役割を果たします。

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4.3 開発・実装フェーズ

開発・実装フェーズは、設計書に基づいて実際にプログラムコードを記述し、システムを構築する工程です。このフェーズでは、主にプログラマーや開発エンジニアが中心となって作業を進めます。SESエンジニアは、指定されたプログラミング言語(Java, Python, C#, JavaScriptなど)やフレームワークを用いて、各機能のコーディング、単体テスト、結合テストなどを実施します。

設計書通りの品質を担保しながら、効率的かつ正確にコードを記述する技術力が求められます。また、開発ツール(IDE)やバージョン管理システム(Gitなど)を使いこなし、チーム内でのコードレビューや情報共有も重要な業務となります。大規模なプロジェクトでは、複数のチームが並行して開発を進めるため、他のチームとの連携や進捗管理も重要な要素となります。

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4.4 テストフェーズ

テストフェーズは、開発されたシステムが要件通りに動作するか、不具合(バグ)がないかを確認し、品質を保証する重要な工程です。SESエンジニアは、テストエンジニアやQAエンジニアとしてこのフェーズに参画します。

具体的には、単体テスト(個々のプログラムが正しく動作するか)、結合テスト(複数のプログラムやモジュールが連携して動作するか)、システムテスト(システム全体が要件を満たすか)、受け入れテスト(ユーザーが実際に利用して問題ないか)など、様々な種類のテスト計画に基づき、テストケースを作成・実行します。発見された不具合は詳細に記録し、開発チームにフィードバックして修正を促します。システムの品質を最終的に保証し、ユーザーが安心して利用できる状態にするための最後の砦となるフェーズです。

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4.5 運用・保守フェーズ

運用・保守フェーズは、システムがリリースされ、実際に稼働を開始した後の管理と維持を行う工程です。SESエンジニアは、運用・保守エンジニアとして、システムの安定稼働を継続的にサポートします。

主な業務内容としては、システムが正常に動作しているかの監視(サーバー、ネットワーク、アプリケーションの状態チェック)、障害発生時の迅速な対応と復旧、システムのパフォーマンスを維持・向上させるためのチューニング、セキュリティパッチの適用やバージョンアップなどの定期メンテナンス、そしてユーザーからの問い合わせに対応するヘルプデスク業務などが挙げられます。このフェーズは、システムが稼働し続ける限り継続的に発生し、予期せぬトラブルにも対応する柔軟性と問題解決能力が求められます。

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5. SESで働くメリットとデメリット

SES(システムエンジニアリングサービス)という働き方を選ぶにあたり、そのメリットとデメリットを理解することは非常に重要です。SESは多くのエンジニアにとってキャリア形成の選択肢の一つとなる一方で、考慮すべき点も存在します。ここでは、SESで働く主な利点と課題を具体的に解説します。

5.1 メリット:多様な経験、スキルアップ、キャリアパス

SESで働くことの最大のメリットは、多様なプロジェクト経験を積める点にあります。自社開発企業では特定のプロダクトや技術に特化しがちですが、SESでは様々な業界のクライアント(金融、製造、通信、Webサービスなど)で、多様なシステム(Webアプリ、スマホアプリ、基幹システム、クラウド基盤など)に携わる機会があります。これにより、幅広い技術や開発手法、業務知識を短期間で習得でき、実践的なスキルアップに繋がります。

また、多くのプロジェクトを経験することで、自身の得意分野や興味のある領域を見つけやすくなり、より具体的なキャリアパスを描きやすくなるでしょう。例えば、開発からインフラ、テストまで幅広く経験し、ゼネラリストとしてIT全体を俯瞰する能力を養ったり、特定の技術(例:AI、クラウド)のスペシャリストを目指したりすることも可能です。様々な現場を経験することで、エンジニアとしての市場価値を高められる点も大きな魅力です。

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5.2 デメリット:帰属意識、プロジェクト選びの難しさ、安定性

一方で、SESにはいくつかのデメリットも存在します。まず、クライアント企業に常駐して働くため、所属するSES企業への帰属意識が薄れやすいと感じるエンジニアもいます。自社オフィスで働く機会が少ない、あるいは自社の企業文化に触れる機会が限られるため、一体感を感じにくい場合があります。

次に、希望するプロジェクトに必ずしも参画できるとは限らないというプロジェクト選びの難しさが挙げられます。SES企業はエンジニアとクライアントの双方のニーズを調整するため、必ずしも自身の希望通りの技術スタックや業界、フェーズの案件にアサインされるとは限りません。待機期間が発生したり、不本意な案件にアサインされたりする可能性もゼロではありません。

さらに、プロジェクトの契約期間によって働き方が変動するため、安定性に不安を感じるケースもあります。長期プロジェクトに恵まれれば安定しますが、短期プロジェクトを転々とすることになると、常に次の案件を探す必要が生じ、精神的な負担となることも考えられます。

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6. SESで希望する業務に就くためのポイント

SES(システムエンジニアリングサービス)の世界で、自身のキャリアを希望する方向に進めるためには、いくつかの重要なポイントがあります。受け身になるのではなく、積極的に自身の市場価値を高め、適切な選択をすることで、理想とする業務に就く可能性を大きく広げることができます。

6.1 スキルアップの重要性

SESで希望する業務に就くための最も直接的な方法は、自身の技術スキルを継続的に高めることです。IT業界の技術トレンドは常に変化しており、新しい言語、フレームワーク、クラウドサービスなどが次々と登場します。需要の高い技術や将来性のある分野を積極的に学び、自身のスキルセットを広げたり深めたりすることで、より多様なプロジェクトや専門性の高い案件にアサインされるチャンスが増えます。オンライン学習プラットフォーム、技術書、勉強会への参加などを活用し、常に最新の知識と技術を習得する意欲が求められます。

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6.2 コミュニケーション能力の向上

SESエンジニアは、常駐先のクライアント企業やプロジェクトチームのメンバー、そして所属するSES企業の担当者など、多様な立場の人々と関わる機会が非常に多いです。そのため、高いコミュニケーション能力は技術スキルと同様に不可欠な要素となります。具体的には、要件のヒアリング、進捗報告、課題の共有、チーム内での連携など、円滑なプロジェクト推進には明確で建設的なコミュニケーションが欠かせません。技術的な内容を非技術者にも分かりやすく説明する力や、相手の意図を正確に理解する傾聴力も、希望する業務を得る上で自身の評価を高める重要なスキルとなります。

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6.3 企業選びのポイント

自身の希望する業務に就くためには、所属するSES企業の選び方も非常に重要です。SES企業によって得意とする技術分野、取引先の業界、案件の種類、エンジニアへのサポート体制などが大きく異なります。入社前に企業の採用担当者や現役エンジニアとの面談を通じて、どのようなプロジェクトに強みを持っているのか、キャリアパスの相談体制は整っているか、希望する技術を習得するための支援があるかなどを確認しましょう。自身のキャリアプランと合致する企業を選ぶことで、ミスマッチを防ぎ、理想の業務に巡り合える可能性が高まります。

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6.4 ポートフォリオの作成・実績のアピール

SESで希望の案件を獲得するためには、口頭での説明だけでなく、自身のスキルや実績を具体的に示すポートフォリオの作成が有効です。これには、個人で開発したWebサービスやアプリケーション、GitHubなどで公開しているコード、参加したプロジェクトでの担当フェーズや貢献内容、使用した技術スタックなどをまとめることが含まれます。また、資格取得も客観的なスキルの証明となります。面談時や案件アサインの際に、具体的な成果物や実績を示すことで、自身の能力を効果的にアピールでき、希望する業務へのアサインに繋がりやすくなります。

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7. まとめ:SES業務の理解を深めてキャリアを築こう

この記事では、SES(システムエンジニアリングサービス)の基本的な定義から始まり、その多様な業務内容、プロジェクトにおける役割、そしてSESで働く上でのメリット・デメリット、さらには希望するキャリアを築くための具体的なポイントまでを解説しました。

SESは、IT業界における多様なプロジェクトとエンジニアのスキルを結びつける重要な役割を担っています。開発エンジニアからインフラ、テスト、そしてマネジメントやサポート業務に至るまで、その業務範囲は非常に広範です。これにより、SESエンジニアは短期間で幅広い技術や業界の知識を習得し、実践的な経験を積むことが可能です。これは、自身の市場価値を高め、将来的なキャリアパスを多様化する上で大きな強みとなります。

もちろん、常駐先での勤務による帰属意識の問題や、アサインされるプロジェクトの選択肢など、SES特有の課題も存在します。しかし、これらのデメリットを理解し、自身のスキルアップに積極的に取り組み、コミュニケーション能力を磨き、そして自身に合ったSES企業を慎重に選ぶことで、より充実したエンジニアキャリアを築くことができるでしょう。

SESは「技術提供」という明確な価値を持つ働き方です。自身の専門性を高め、多様な経験を通じて成長を続け、IT業界の変化に対応できる柔軟なエンジニアを目指しましょう。

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